MRI原理教室⑤:パルスシーケンスチャートの基本をマスターしよう!
こんにちは、放射線技師のラジブログです
今回のMRI原理教室では、パルスシーケンスチャートについて学びます
前回までに習得したT1緩和やT2緩和の基礎知識を活かし、パルスシーケンスチャートの意義とその活用方法について一緒に理解を深めていきましょう♪
パルスシーケンスチャートとは?
MRIの参考書で上のような図を見たことはないでしょうか?
この図をパルスシーケンスチャートと呼んでいて、RFパルスおよび傾斜磁場の強さとタイミングを示した図となります
横軸が時間、線からの高さがRFパルスや傾斜磁場の強さを示しています
パルスシーケンスチャートの意義
パルスシーケンスチャートから様々なことが読み取れますが、、、
なぜ、このような図が必要なのでしょうか?
MRIは多くの因子が関わっている
CTやX線写真は電子密度により画像が決まる単因子画像です
しかし、MRIは体内のプロトンを画像化しています
このプロトンから出る信号は様々な要因を含んでいます
前回までに学んだ、縦緩和時間(T1)、横緩和時間(T2)の他に流速や拡散係数などに左右されながら信号を出しています
そして、どの因子がどの程度影響するのかで画像が大きく変わります
それを把握できないと画像を正しく読み取ることができません
強調画像
画像に意味を持たせるためにどの因子がどの程度、画像に影響を及ぼすのかを作り出します
それが強調画像です
T2値を強調するT2強調画像では、信号の強弱から組織が水分を含んでいるのか、いないのかなどが分かります
T1値を強調するT1強調画像からは、脂肪や早期出血などが分かります
これらを強調するために必要なのが、『適切な強さとタイミング』で印加するRFと傾斜磁場で、それを図にしたのがパルスシーケンスチャートです
スライス選択傾斜磁場
それでは1つ1つ見ていましょう
まずはスライス傾斜磁場です
3Tの場合、プロトンは全て127MHzで歳差運動をしています
信号を取得するために同じ127MHzのRFパルスを印加すると、全てのプロトンが共鳴してしまい、励起場所を選択できません
そこでスライス方向に傾斜磁場を印加することで、位置により共鳴周波数が変化します
共鳴周波数が変化することで、撮影したいスライス面のプロトンのみを励起させることができます。これがスライス選択傾斜磁場です
周波数エンコード傾斜磁場
スライス選択傾斜磁場を印加することで、任意の断面を選択することが可能となりました
しかし、これだけではスライス面内の信号の分離は出来ていません
スライス面内の位置情報を得るには、位相エンコード傾斜磁場と周波数エンコード傾斜磁場を使用します
スライス選択傾斜磁場のみでは面内のスピンは全て同一です
このままではフーリエ変換をしても、位置を分別できません
そこで先ほども登場した、傾斜磁場の出番です
周波数エンコード方向に傾斜磁場をかけることで、位置ごとの磁場強度を変更します
周波数エンコード傾斜磁場をかけることで、位置ごとの磁場強度を変更します
角周波数は磁場強度に比例するので、位置ごとに周波数が異なり分別ができるようになりました
そして周波数エンコードはエコーを読み取る際い、各位置のエコーごとに周波数情報を付与しています
位相エンコード傾斜磁場
周波数エンコードを付与することで、1列目、2列目、3列目は異なる周波数で回転をしていて分別ができるようになりました
しかし、1行目、2行目、3行目のベクトルとしての周波数は同じに見えます
これを分別するために位相エンコード傾斜磁場を使います
しかし、周波数エンコード傾斜磁場とは異なり、
ボクセルの数だけ傾斜磁場を変え、位相エンコードを行うことで位置情報を分離できます(matrix256なら256回)
繰り返しになりますが、周波数エンコードはエコーを読み取る際い、各位置のエコーごとに周波数情報を付与しています
しかし、位相エンコードは位置情報を位相差としてMRI信号に付加します
つまり1つの傾斜磁場を付与しただけでは、行間ごとの位相の差は変わりません
なのでボクセルごとに傾斜磁場を変更して、隣接したボクセル間に位相差を与えて位置情報を付加します。(※大まかな説明として捉えてください)
まとめ
- パルスシーケンスチャートは、RFパルスおよび傾斜磁場の強さとタイミングを示した図
- スライス選択傾斜磁場により撮影したいスライス面のプロトンのみを励起させることができる
- 周波数エンコード傾斜磁場はエコーを読み取る際い、各位置のエコーごとに周波数情報を付与する
- 位相エンコード傾斜磁場は位置情報を位相差としてMRI信号に付加する
概要を理解していただけたら幸いです
それでは次回も一緒に頑張りましょう!
ではまた!!