MRI原理教室⑨【DWI・拡散強調画像】
みなさん、こんにちは!
本日のテーマは拡散強調画像です。DWIと呼ばれるものですね。
現在のMRIでは欠かせない重要な技術となりますので、しっかり理解していきましょう。
それではスタートです。
ブラウン運動
DWIを見ていく前にブラウン運動を確認しましょう。
MRIでは血液や髄液などの流体以外は制止した状態だと仮定して撮像が行われています。
しかし、実際には体内の水分は絶え間なく動いており、MRIの画像に影響を及ぼしています。
液体は熱エネルギーにより動いており、これをブラウン運動と呼びます。
ブラウン運動で良く使われる例えが、インクと水です。
コップの中の水に一滴のインクを垂らすと、水が動いていなくても、やがてインクは均一に混ざっていきます。この原因はブラウン運動(水の熱運動)と言われています。
このブラウン運動の方向はランダムであり、温度が高いほど、液体の粘稠度が低いほど大きくなります。
DWI(diffusion weighted image : 拡散強調画像)
拡散強調画像(DWI)はこの水分子の動き(ブラウン運動)を観測しています。
実際のDWIの画像を確認しましょう。
画像の赤丸の部分は脳梗塞の部位で、拡散が制限されているため、DWIで高信号を呈しています。
それ以外の比較的低信号の組織は拡散が制限されていない正常組織です。
拡散が制限される理由としては、超急性期脳梗塞の場合は細胞性浮腫により、悪性腫瘍の場合は細胞密度が高いために、細胞外液が動きにくい状態と説明されています。
DWIは拡散が制限されているモノを強調していると覚えてください。
拡散強調画像という名前ですが、実際は逆ですね。
DWIのパルスシーケンス
実際のパルスシーケンスを確認していきましょう。
DWIではEPI法を使用します。
EPI(echo planar imaging)法
EPIは、励起パルス後に周波数エンコード傾斜磁場(読み取り傾斜磁場)を高速に連続反転して、反転ごとに信号(k空間の1行分)を取得して、1回の励起パルスでk空間の全ての行の信号を取得するパルスシーケンスです。一筆書きとも言われています。
EPIをDWIのシーケンスにする
EPIにはFID-EPIとSE-EPIがあります。
励起パルス後のFIDからエコー信号を取得する方法がFID-EPIもしくはGRE-EPIと呼ばれています。これは各信号のピークがT2*減衰するので、最後の方の信号が極端に弱くなってしまいます。
SE-EPIでは励起パルス後に再収束パルスを印加する事でSE信号を取得します。SE信号なので各信号のピークはT2減衰します。
なので、DWIでは基本的にSE型のEPIを使用します。
これだけでは拡散は強調されないので、180パルスの両側に、MPG(motion probing gradient)と呼ばれる傾斜磁場を追加します。
これがDWIのパルスシーケンスです。
どのように拡散を観察するのか
正常部位の拡散
詳しく見ていきましょう。励起パルスの横にMPGを移動して簡単にしました。
まずは拡散が制限されていない正常部位から見ていきます。
MPGの目的は、「位相をワザとズラす」です。
MPGが無い場合だと、いつも通り180°再収束パルスにより位相が揃い高信号になります。
MPGを印加することで、スピンの位相はズレます。そして逆方向のMPGを印加するとズレた位相は元の位置に戻ります。(180°パルスがあるため同じ方向にMPGを印加しています。)
ところが、水分子のように絶え間なく動く場合、1回目のMPGと2回目のMPGの間に違った場所に移動しているため、完全には元の位置に戻れなくなり信号が低下してしまいます。
拡散による位相ずれは180パルスでも戻らないので、拡散大きいほど信号低下します。拡散強調画像ではMPGにより、その信号低下が強調されます。
病変部位の拡散
拡散が制限されている部位では、水分子の動きが鈍く、1回目と2回目のMPGの間に遠くに行けないので、ほぼ同じ位置に戻ることが出来るので強い信号が出せます。
b値とは?
拡散強調画像には、強調する度合いをb値と呼ばれるものがあります。
これはdiffusionコントラストの強調度を表すもので以下の式で成り立っています。
特に重要なのは傾斜磁場強度とMPGの時間と間隔です。
b値を上げていくと、拡散しやすい組織ほど信号低下が大きくなります。
T2 shine through
DWIはT2WIにDiffusionコントラストを付加した画像です。なのでT2WIで高信号の部分があるとDWIで高信号になってしまうことがあります。これをT2 shine throughといいます。
なのでb=1000で高信号を見たらb=0だけでなくADCも確認する必要があります。
見かけの拡散係数(ADC:apparent diffusion coefficient)
見かけの拡散係数のことをADCと呼んでいます。
拡散が制限されている組織はADCで低信号になり、制限されていない正常な組織はADCで高信号に表示されます。
DWIではADC mapを作成するために2つ以上のb値を用いて撮像しており、小さい方のb値を0(T2WI)と扱う事で、T2の影響を除去することが可能です。
なので、T2 shine throughを疑うときはADC mapが有用になります。
まとめ
それではまとめです。
- MRIでは血液や髄液などの流体以外は制止した状態だと仮定して撮像されている
- しかし、実際には体内の水分は絶え間なく動いており、MRIの画像に影響を及ぼしている。これをブラウン運動と呼ぶ
- 拡散強調画像(DWI)はこの水分子の動き(ブラウン運動)を観測している
- DWIではEPI法を使用しており、MPGを印加する事で拡散強調画像になる
- DWIではSE型のEPIを使用している
- 拡散強調画像では、強調する度合いをb値と呼んでいる
- b値を上げていくと、拡散しやすい組織ほど信号が低下する
- DWIはT2WIにDiffusionコントラストを付加した画像で、T2WIで高信号の部分があるとDWIで高信号になってしまうことがあり、これをT2 shine throughという
- T2 shine throughを疑うときはADC mapが有用
- 見かけの拡散係数のことをADCという
- 拡散が制限されている組織はADCで低信号になり、制限されていない正常な組織はADCで高信号に表示される
以上参考になれば嬉しいです。
それではまた!!