MRI原理教室⑥:SE法とTSE法の基礎とその違い
こんにちは、放射線技師のラジブログです
今回はMRI原理教室の第6回として、SE法(スピンエコー法)とTSE法(ターボスピンエコー法)について学びます
コーヒーを片手にリラックスしながら、これらの重要な撮像技術の基礎を理解していきましょう♪
TEとTR
実際のシーケンスチャートを見る前に予備知識をつけましょう。
TEとは
エコー時間(TE:echo time):励起RFパルスからエコー信号の中央までの時間をエコー時間(TE)と呼びます
TEはT2と関係があります
TEが短いと、T2が長い組織の横磁化も短い組織の横磁化も十分に減衰をしていないので、差が反映されません
逆にTEを長く設定することで、T2の長い組織と短い組織の差が大きくなり信号強度に反映されます(T1緩和、T2緩和に関してはMRI原理教室④を参照してください)
TRとは
繰り返し時間(TR:repetition time):励起RFパルスから次の励起RFパルスまでの時間を繰り返し時間(TR)と呼びます
TRはT1と関係があります
TRが長いと、T1の長い組織の縦磁化も短い組織の縦磁化も回復してしまい、次の励起パルスを照射する時にT1の差が反映されません
逆にTRを短く設定することで、T1の短い組織と長い組織の差が大きくなり、信号強度に反映されます
TEとTRでコントラストをつける
TEとTRを適切に設定することでコントラストをつけることができます
コントラストは大きく3つに分けられます
- T1強調画像(T1WI):解剖学的画像
- T2強調画像(T2WI):水が強調された画像
- プロトン密度強調画像(PDWI):1H原子核(プロトン)密度を反映した画像
T1強調画像(T1WI)
T1WIが欲しい時は、TRを短くすることでT1の影響が強くなり、TEを短くすることでT2の影響を少なくします
一般的にはTRは500ms程度、TEは10ms程度となります
T2強調画像(T2WI)
T2WIが欲しい時は、TRを長くすることでT1の影響が弱くなり、TEを長くすることでT2の影響を大きくします
一般的にはTRは4000ms以上、TEは70ms以上となります
プロトン密度強調画像(PDWI)
PDWIが欲しい時は、T1とT2の両方の影響を少なくする必要があります
つまり、TRを長くすることでT1の影響を減らし、TEを短くしてT2の影響を減らします
Spin Echo法(SE法)
こちらはSpin Echo系のシーケンスチャートです
Spin Echoは略してSEと呼ばれます
基本的には90°の励起パルス後、TE/2の時点で180°再収束RFパルスを照射して、励起パルスからTEの時点でピークとなるSE信号を取得します
このシーケンスチャートを分解しながら確認をしていきましょう
励起パルスと再収束パルス
自由誘導減衰(FID:Free Induction Decay)
励起パルス後に自然に発生する信号を自由誘導減衰(FID:Free Induction Decay)と呼びます
この信号はDDI以外の磁場の不均一など外部的要因の影響を受けているのでT2*で減衰します
しかも信号の初めの部分は励起パルスと重なっており観測できません
励起パルス
MR信号は時間と共に小さくなっていきます
この時の磁気モーメントの様子を見てみましょう
磁気モーメントは同一方向を向いていると大きな信号を出します
RFパルス照射後、時間の経過と共に位相がズレていき、全てがバラバラになると信号が出ません
このままではMR信号を観測できないので、再収束パルスを用いて位相を再び揃えることで信号を復活させます
再収束パルス
再収束パルスを照射した時、どのように位相が変化するかを確認していきましょう
- 90°励起パルスを照射後、縦磁化は無くなり、位相の揃った横磁化が出現します。(FID)
- 時間の経過とともに位相はズレていき、信号も小さくなります
- 180°再収束パルスを照射すると、180°位相が回転をします(TE/2の時点)
- 先程までバラバラに離れていった位相が、同じ向きに揃い始めます
- 180°再収束パルスを照射するまでの時間と同じ時間で位相が揃い、大きな信号が発生します(TEの時点)
このようにSE法は、90°励起パルス後、TE/2の時点で180°再収束RFパルスを照射して、励起パルスからTEの時点でピークとなるSE信号を取得します
SE法の特徴
- 180°再収束パルスで、磁場の不均一を相殺するのでT2減衰する
- T2減衰なのでS/Nが高くて綺麗な画像を取得できる
- 180°再収束パルスが必要なので撮像時間がかかる
撮像時間
SE法の特徴は180°再収束パルスがあることです
この再収束パルスがあることで、S/Nが高くて綺麗な画像が得られるのですが、それ故に撮像時間がかかります
では、どのくらい撮像時間がかかるのか計算をしていきましょう
撮像時間は上記の式を用いることで求めることができます
加算回数とは、『k空間の同じラインを何回取得するか』という値です
TR:500ms、Ny:256、NEX:2のT1WIを撮像すると、
0.5×256×2=256秒=4分16秒
TR:4000ms、Ny:256、NEX:2のT2WIを撮像すると、
4×256×2=2048秒=34分8秒
このようにSE法は時間がかかることがわかりました
T2WIだけで34分も検査はできません
そこで登場したのがTSE法です
TSE法とは
TSE(trubo Spin Echo)法もしくはFSE(fast Spin Echo)法とも呼ばれていて、SE法を高速化させたシーケンスです
- 骨組みはSE法と同じである
- 1TR中に複数回180°パルスを照射して、複数のエコーを得ることができる
- 180°パルスの数をTF (Turbo Factor)と呼び、1TRの中で取得するエコーの数を示す
- 撮像時間が、1/TFに短縮する
最大の特徴は撮像時間が、1/TFに短縮することです
この技術によりSE法は速さも手に入れました
まとめ
それでは本日のまとめをしましょう!
- エコー時間(TE:echo time):励起RFパルスからエコー信号の中央までの時間をエコー時間(TE)という
- 繰り返し時間(TR:repetition time):励起RFパルスから次の励起RFパルスまでの時間を繰り返し時間(TR)という
- TEとTRを適切に設定することで、T1WI・T2WI・PDWIとコントラストをつけることができる
- SE法は90°励起パルス後、TE/2の時点で180°再収束RFパルスを照射して、励起パルスからTEの時点でピークとなるSE信号を取得する
- TSE法はSE法の弱点である撮像時間を減らすことができる
TSE法に関してはざっくりと説明をしました
次回ではk空間の説明をしてから、TSE法についてもう少し説明を加えたいと思います
以上参考になれば幸いです
それではまた!!