MRI原理教室

MRI原理教室⑧:GRE法の基礎を理解しよう

radio-neko

こんにちは、放射線技師のラジブログです

今回はMRI原理教室の第8回として、GRE法(Gradient Echo法)の基礎について学びます

GRE法はSE法よりも複雑で、数回に分けて詳しく説明していきます

リラックスして、コーヒー片手にご覧ください

それでは始めましょう!

GRE法〜シーケンスチャート〜

こちらがGRE法のシーケンスチャートです

ちなみにGREとはGradient Echoの略です

GRE法のシーケンスチャートの特徴は再収束パルスがないことです

それによりSE法よりも撮像時間を短縮することが可能です

では、再収束パルスがない状態でどのように位相を揃えて信号を収集するのでしょうか?

答えは傾斜磁場を再収束パルスの代わりとして利用します

GRE法〜FIDの活用〜

どのように傾斜磁場を再収束パルスの代わりにするのかを説明します

FIDに位相エンコードを付加する

GRE法では以前に紹介したFID(Free Induction Decay)がポイントとなります

FIDはT2*減衰をしていきます

このFIDに位置情報を付加(エンコード)します

RFパルスはSE法の90°と異なり、それ以下の角度なのでα°と表記します

読み取り傾斜磁場を印加し、位置情報を付加すると同時にGRE信号を生み出します

FIDからGREになるまで

傾斜磁場をかけると、

位相が分散して信号が急激に消失します

この状態では信号を得ることができません

なので、反対の傾斜磁場を同じ強さで同じ時間印加します

そうすると、位相が再収束して信号が復活します

この状態では綺麗なピークを得ることができません

それを解消するために、さらに傾斜磁場を印加し続けて、位相を分散させることで綺麗な山なりの信号となります

これが再収束パルスの代わりに傾斜磁場を使用してGRE信号にする方法です

残留横磁化とは?

GRE法はSE法と比べて再収束パルスが無いので、撮像時間を大幅に短縮することができました

つまりTRとTRの間隔が短くなります

TR間隔が短くなる=撮像時間も短くなるのですが、問題点があります

それは横磁化が完全に消える前に、次の励起パルスが印加されることです(TR<<T2)

横磁化が完全に消えるまで待っていては、SE法と撮像時間が変わらないだけでなく、再収束パルスを印加していないので、磁場の不均一を除去していないT2*減衰する信号、つまりS/Nが低いだけの画像になってしまいます

残留横磁化の解決方法

残留横磁化を解決する方法は2つあります。

  1. スポイラー型GRE法(インコヒーレント)
  2. リワインダー型GRE法(コヒーレント)

スポイラー型GRE法(インコヒーレント)

スポイラー型GRE法では残留横磁化の位相を分散させることで、横磁化を消滅させます

RFスポイラーでTR毎に励起パルスの位相を変え、グラディエントスポイラーで横磁化を消去します

つまり、スポイラー型GRE法では信号収集後にスポイラーによって残留した横磁化を消去し、縦磁化のみを使用します

グラディエントスポイラーを抜粋した図です

信号収集後にグラディエントスポイラーを印加し横磁化を消去します

TRの間に回復した縦磁化のみが使用可能となりました

これを繰り返し行うのがスポイラー型GRE法です

リワインダー型GRE法(コヒーレント)

コヒーレント型GRE法では信号を収集した後の残留横磁化を再利用します

リワインダーグラディエントを印加して、横磁化を再収束します

スポイラー型GRE法では消去していましたが、コヒーレント型GRE法では残したままにします

リワインダーグラディエントを抜粋した図です

残留横磁化は時間と共に位相が分散して行きますが、逆方向に位相エンコードを印加(リワインダーグラディエント)する事で再度横磁化の位相を揃えます

短いTRでこの作業を繰り返していくと、ある一定のところで横磁化と縦磁化が一定になります。これをSSFPと言います

定常状態自由歳差運動(Steady State Free Precession:SSFP)とは

TR間隔を短くして励起パルスを繰り返し印加すると、縦磁化と横磁化が平衡状態(SSFP)となります

短いTR間隔では縦磁化は回復しきらず、横磁化も減衰しきらず信号は一定となります

つまり、横磁化と縦磁化の両方が同時に存在して安定した状態が持続しています

SSFPでは、繰り返されるRFパルスによりGREとSEが生じます

それぞれをFISP信号、PSIF信号と呼びます

コヒーレント型GRE法では、このSSFPを上手に利用する必要があります

なかなか理解するのも説明するのも難しいところですが、頑張っていきましょう

まとめ

GRE系シーケンスは説明が難しいですね。それではまとめましょう

  • GRE法ではSE法での180°再収束パルスがなく、傾斜磁場を用いて信号を得る
  • GRE法ではRFパルスを組織のT2緩和よりも短時間に繰り返すので、縦磁化が回復しきらず、横磁化も減衰しきらず信号は一定となる(SSFP)
  • GRE法では撮像時間を短縮できるが、残留横磁化の問題が浮上した
  • 残留横磁化への対処方法は2種類ある(スポイラー型とリワインダー型)
  • スポイラー型GRE法は信号収集後にスポイラーによって残留した横磁化を消去し、縦磁化のみを使用する
  • コヒーレント型GRE法では信号を収集した後、リワインダーグラディエントを印加して横磁化を再収束する

以上参考になれば幸いです

それではまた!!

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