MRI原理教室③:励起と緩和をわかりやすく解説!
こんにちは、放射線技師のラジブログです
今回は「励起と緩和」について、初心者の方でも理解できるように解説します
MRIの基本を学んできた方なら、この内容もスムーズに理解できるはずです
それでは始めましょう!
前回のおさらい
前回は、MRIで使用する水素原子(1H)について学びました
MRIは体内の水や脂肪の1Hを観測します
これらの水素原子核を複数まとめて1つのベクトルとして捉えることを「巨視的磁化」と言います
この記事では、巨視的磁化が、励起と緩和によってどのように反応するのかを学びます
励起と緩和とは?
前回も少し触れましたが、磁場の中に置かれたプロトンは2つのエネルギー準位に分かれます
磁場の中に置かれたプロトンは、2つのエネルギー準位に分かれます
1つは磁場方向(Z軸)から55°、もう一方は125°
少しだけ55°の方が多く、両者の差分がMRI信号の基になります
磁場にさらされただけの状態を「熱平衡状態」と呼び、最も安定しています
ここから、RF波(電磁波)を使って高エネルギー状態にすることを「励起」と言い、
元の安定状態に戻る過程を「緩和」と言います
なぜ励起をするのか?
熱平衡状態の巨視的磁化(M0)は静磁場(B0)方向を向いています
静磁場は、MRI全体の磁場を作っている大きな磁場です
同じ方向を向いた巨視的磁場は、静磁場の中に埋もれてしまい検出ができません
このままではMRIで検出できないので、RF波を使って巨視的磁化を静磁場と異なる方向に向ける必要があります
これが励起を行う理由です
励起するのに必要なものは?
巨視的磁化を静磁場と区別するためには、RF波(B1)を使って巨視的磁化を静磁場と直交する方向に向けます
静磁場に平行な巨視的磁化を「縦磁化」、
直交する方向の巨視的磁化を「横磁化」と言います
RF波について
ただRF波を当てるだけでは励起はされません
RF波の周波数が巨視的磁化の角周波数と同じ場合にのみ、励起が行われます
この周波数を「共鳴周波数」と言います
ではこの共鳴周波数はどのくらいでしょうか?
以下の式を用いて、体内のプロトンの回転を計算をします(角周波数を求めます)
1Hのγ(磁気回転比)は42.58MHz/T
B0(磁束密度)は使用するMRIの静磁場強度
今回は3Tで計算をします
ω=42.58(MHZ/T)×3(T)= 127.74(MHz)
以上から体内のプロトンは3Tでは127.74MHzで回転をしています
この周波数に一致するRF波を当てることで、縦磁化を横磁化に変えることができます
RF波により傾く角度をフリップ角といい、次の式で表します。
RF波を90°傾けると90°パルス、180°傾けると180°パルスと呼びます
緩和について
RFパルスにより励起状態になったプロトンは、
RF波をOFFにすると励起状態からゆっくりと熱平衡状態に戻ります
この過程を「磁気緩和(緩和)」と言います
- 縦磁化が回復する過程を「縦緩和(T1緩和)」
- 横磁化が消失する過程を「横緩和(T2緩和)
と呼びます
まとめ
- 熱平衡状態が最も安定していて、RF波(電磁波)で高エネルギー状態にするのを励起という
- 励起状態からゆっくりと熱平衡状態に戻っていく過程を磁気緩和(緩和)という
- 励起をする理由は、静磁場の中に埋もれた巨視的磁化を可視化するためである
- RF波の周波数と巨視的磁化の角周波数が同じ場合にのみ励起される
今回は、励起と緩和について説明しました
それではまた次の記事でお会いしましょう!
バイバイ