MRI原理教室

MRI原理教室⑩:TOF MRAの基礎と臨床応用

radio-neko

こんにちは、放射線技師のラジブログです

今回はMRI原理教室の第10回として、MRA(TOF angiography)について解説します

TOF MRAは造影剤を使用せずに血管情報を得ることができる重要な技術です

しっかり理解していきましょう

それでは始めましょう!

MRAとは

MRAは造影剤を使用せずに血管情報を得られる手法であり、様々な方法がありますが、今回はTOFを使用したMRAを扱います

MRAでは血管の信号を最大にし、同時に周囲組織の信号をできるだけ抑制することで高い血管のコントラストを得る必要があります

得られた画像をMIPにすることで、脳梗塞や動脈瘤の検出などに使用されます

TOFを利用したMRAは、Gradient Echo法のinflow効果を利用した非造影MRA撮像法です

飛行時間(time of flight)効果

MRIでは流速により信号が変化する現象を飛行時間効果(TOF effect)と言います

TOF法では、短いTRのGradient Echoを繰り返し収集します

同じ断面を繰り返し撮影するため、撮像面内の静止組織と常に流入する血液では信号に違いが出てきます

撮像面内の静止組織の信号は?

撮像面内の静止組織では短いTRが繰り返されることで、縦磁化が完全に回復しないうちに次のRFパルスを受けるため、徐々に低信号となります(飽和効果)

撮像面内に流入してくる血液の信号は?

通常、短いTRが繰り返されると縦磁化は完全に回復しないうちに次のRFパルスを受けますが、血液は撮像面外から撮像面内に流入してくるため、励起されていない(飽和されていない)血液と入れ替わり、高信号が保たれます

これを流入効果(inflow effect)といいます

流速とinflow効果

nflow効果は流速、TR、スライス厚によっても変化します

  • A:流れていない場合(静止状態)はスライス面内と血流部分で同様な信号になります
  • B:ゆったりとした流れの場合は、静止部分は先ほどと同様で、血管の部分では新たに流入してきた血液とすでに飽和された血液が混在します。新たに流入した血液は飽和されていないので高信号となります
  • C:スライス面内の血液は全て新たに流入した血液と入れ替わり、最も高信号となります
  • D:流れの速い血液が多くなると、スライス面内の下流では再収束パルスを受ける前にスライス面から移動し、上流は励起パルスを受けていない血液に満たされていきます。そのため、Cの時よりも信号が低下します
  • E:スライス面内の血液は全て励起パルスを受けましたが、再収束パルスを受ける前に面内から移動した血液、もしくは励起パルスを受けていないで再収束パルスのみを受けた血液で満たされています。どちらの場合も信号を出すことはできないため、信号は0です。この現象を高速度信号損失といいます

※GRE法では励起パルスのあとに傾斜磁場を再収束パルスの代わりとして撮像をするので、高速度信号損失はありません

下流における流入効果の減弱

今までの説明は2Dを前提としていましたが、現在の主流は3Dです

3DでS/Nが高くなるのは、励起ごとにスラブ全体から信号を取得するからです

しかし、スラブの下流の部分で流入効果が弱くなり、血管内腔の描出が低下します

この下流における流入効果の減弱の対策として、MOTSAと可変フリップ角法があります

MOTSA(multiple overlapping thin slab acquisition)

撮像したスラブ(A+B)の両端の部分を捨てて、中央の部分のみで画像を構成(C)する方法です

スラブの両端は血流方向によっては下流となるため、血管描出不良になる可能性が高いからです

可変フリップ角法(variable flip angle technique)

可変フリップ角法は、TONEまたはramped RFとも呼ばれています

通常の3D撮像ではスラブ全体に一様なフリップ角の励起パルスが照射されます

これに対して可変フリップ角法では、上流側から下流方向にFAが大きくなるようにRFを調節します

可変フリップ角法が対策となる理由

出典:MRI完全解説

血管外組織(静止状態)はFAが大きいほど飽和効果が大きく信号が低下します。しかし、流入してきた血液はFAが大きいほど強い信号を出します

上流側ではFAが小さいため、血管外組織の信号の低下は少なく、流入してきた血液の信号も少し低下します。つまり、血管内外のコントラストは低下しますが、血液の飽和効果も少ないため、下流でより強い信号を出す余力を残しています

下流ではFAが大きいため、血管外組織の信号低下が大きく、流入してきた血液も余力を残して相対的に大きな信号を出すので血管内外のコントラストが維持されます

全体で見ると可変フリップ角法によって、上流と下流のコントラストが平均化され、下流の細い末梢動脈の描出が良くなります

まとめ

それではまとめにいきましょう!

  • MRAは造影剤を使用せずに血管情報が得られる手法
  • MRIでは流速により信号が変化する現象を飛行時間効果(TOF effect)という
  • 短いTRが繰り返されることで、縦磁化が完全に回復しないうちに次のRFパルスを受けるため、徐々に低信号となる(飽和効果)
  • 血液は撮像面外から撮像面内に流入してくるため高信号が保たれる。これを流入効果(inflow effect)という
  • inflow effectは流速、TR、スライス厚によって変化する
  • MRAは現在では3Dで撮像するのが主流になっているため、スラブの下流の部分で流入効果が弱くなり、血管内腔の描出が低下する
  • 下流における流入効果の減弱の対策として、MOTSAと可変フリップ角法がある

以上参考になれば幸いです。

それではまた!!

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