【MR専門技術者 性能評価】T1値、T2値測定試験とレポートの書き方を解説
MR専門技術者を目指す中で、一番苦労するのが性能評価です。
性能評価は4つ行わなければなりません。
1.均一ファントムによるSNR測定試験
2.均一性試験
3.スライス厚測定試験
4.T1値,T2値測定試験
この記事では、
4.T1値,T2値測定試験の解説とレポートの書き方を解説します。
- T1値、T2値の測定方法
- ファントムの作成方法
- レポートの書き方
・申請受託の可否に関しては一切責任は持てませんのでご了承ください。
以下の記事も参考にしてください。
・MRI認定技師(磁気共鳴専門技術者)に一年で合格する方法【オススメ参考書や勉強方法・資格申請手順まで公開】
・MRI過去問の解答と解説
・他のMR性能評価試験はこちら
MR専門技術者認定機構が求める条件
まずは認定機構がホームページに出している条件を確認しましょう。
4.T1値,T2値測定試験
1)適当な溶液(例:ガドリニウム希釈溶液など)を作成して測定対象物質を作成し、ファントムの安定化を図った後に撮像を行う。
2)装置に組み込まれた簡易法によらず複数の信号強度点から求める。
3)T1値T2値を求めるための根拠となった計測結果表と片対数グラフおよびそのグラフからの読み取り値からT1値T2値を求めるための数値と計算式を示す。
ファントムの作成
・適当な溶液(例:ガドリニウム希釈溶液など)を作成して測定対象物質を作成し、ファントムの安定化を図った後に撮像を行う。
と記載されいますので、この条件を満たすファントムを作成しましょう。
用意するものは2つだけです。
- 精製水 500mL
- ガドリニウム造影剤
これら2つを用いて、ガドリニウム希釈溶液ファントムを作成します。
精製水はこちらを用います。↓↓
これを使うことで500mLを正確に用意でき、円筒型の容器まで手に入ります。
用意した精製水に、ガドリニウム造影剤を入れて0.5mmol/lのガドリニウム希釈溶液ファントムを作成します。
・造影剤の種類によりガドリニウム濃度が違うので、添付文書をよく確認してください。
・T1値、T2値は温度で変化をするので、測定前日からMRI室で保管してファントムの安定化を図ってください。
T1値の測定方法
T1値測定の撮像条件
T1値の測定方法は2種類あります。
- 90°パルスを用いる飽和回復法
- 180°反転パルスを用いる反転回復法
どちらでもT1値の測定が可能ですが、反転回復法の方が回復過程が長く正確度が高いので、一般に180°を用いた反転回復法を使用します。
一例として私が使用した撮像条件を紹介します。
コイル:装置内蔵Body Coil
シーケンス名:Inversion Recovery法
TR:5000ms
TE:10ms
TI:50,100,200,250,300,400,500,1000,1500,2000ms
スライス厚:5mm
Matrix:128×128
NEX:1
バンド幅:250Hz/pixel(メーカーによりバンド幅の定義は異なります。)
FOV:220×220mm
TR、TEは固定でTIを変化させて撮像を行います。
・ファントムをアイソセンターに設置後、30分以上経過後に撮像を開始してください。
T1値の測定方法
- 撮像した画像にROIを設置し”実測値”を測る
- IR法では信号は絶対値表示になるため、null pointよりも短いTIは”補正値”としてマイナス値とする
- 測定値の最大値をSmax、補正値をSIとし”S=Smax-SI”を方対数グラフにプロットする
- 片対数グラフよりプロット直線部分より傾きを調べ、T1値を計算する
実測値を測る
撮像して得られた画像を測定します。
測定時のROIはファントムの60~80%含むように設定し全ての画像にコピーして計測してください。
TI(ms) | 実測値 |
50 | 2154 |
100 | 277 |
200 | 406 |
250 | 635 |
300 | 812 |
400 | 1051 |
500 | 1192 |
1000 | 1377 |
1500 | 1390 |
2000 | 1391 |
実測値から補正値に変換する
T1値の測定ではIR法を使用しています。
IR法では信号は絶対値表示になっているため、null pointよりも短いTIの値もプラスで表示されています。
測定結果を見てみると、T1が50msの時は実測値は2154、100msの時の実測値は277と数値が下がっています。そしてTIが200msになると実測値は406と上昇しています。
ここから、TIが100〜200の間にnull pointが存在しているとわかります。
つまり今回の測定ではTIが100ms以下はnull pointよりも短いので、マイナス表記にします。
TI(ms) | 実測値 | 補正値 |
50 | 2154 | -2154 |
100 | 277 | -277 |
200 | 406 | 406 |
250 | 635 | 635 |
300 | 812 | 812 |
400 | 1051 | 1051 |
500 | 1192 | 1192 |
1000 | 1377 | 1377 |
1500 | 1390 | 1390 |
2000 | 1391 | 1391 |
補正値をSIとしS=Smax-SIを方対数グラフにプロットする
補正値をSIとしS=Smax-SIを求めます。
今回の測定ではSmaxはTI=2000msの時の1391となります。
TI(ms) | 実測値 | 補正値 | SImax-SI |
50 | 2154 | -2154 | 3545 |
100 | 277 | -277 | 1668 |
200 | 406 | 406 | 985 |
250 | 635 | 635 | 756 |
300 | 812 | 812 | 579 |
400 | 1051 | 1051 | 340 |
500 | 1192 | 1192 | 199 |
1000 | 1377 | 1377 | 14 |
1500 | 1390 | 1390 | 1 |
2000 | 1391 | 1391 | 0 |
次に片対数グラフにプロットをしていきます。
横軸はTI(ms)、縦軸は信号強度にします。
今回は説明用でエクセルで作成していますが、申請する時には片対数グラフに手書きで作成してください。
プロット直線部分より傾きを調べ、T1値を計算する
作成した片対数グラフの直線部から傾きを調べます。
今回はTI:400msとTI:200msで行います。
A点:TI1(200ms)、SI1(985)
B点:TI2(400ms)、SI2(339)
InM0-InMz(T)=(logM0-logMz(τ))/logeより、
傾き=(logMz(τ1)-logMz(τ2))/(τ1-τ2)=-loge(1/T1)
=-(1/2.303)×(1/T1)、グラフより
傾き=(logMz(τ1)-logMz(τ2))/(τ1-τ2)
=(log985-log339)/(200-400)
=-0.00231618
=-(1/2.303)×(1/T1)
T1=1/(0.00231618×2.303)≒187(ms)となります。
T2値の測定方法
T2値測定の撮像条件
T2値の測定はT2減衰するSE法を使用します。
一例として私が使用した撮像条件を紹介します。
コイル:装置内蔵Body Coil
シーケンス名:spin echo法
TR:3000ms
TE:30,60,90,120,150,180,210,250,300ms
スライス厚:5mm
Matrix:128×128
NEX:1
バンド幅:250Hz/pixel(メーカーによりバンド幅の定義は異なります。)
FOV:220×220mm
TRは固定で、TEを変化させて撮像を行います。
・ファントムをアイソセンターに設置後、30分以上経過後に撮像を開始してください。
T2値の測定方法
- 撮像した画像にROIを設置し測定値を測る
- 片対数グラフを作成し、プロット直線部分より傾きを調べ、T2値を計算する
測定値
撮像して得られた画像を測定します。
測定時のROIはファントムの60~80%含むように設定し全ての画像にコピーして計測してください。
TE(ms) | 測定値 |
30 | 1223 |
60 | 1009 |
90 | 829 |
120 | 680 |
150 | 554 |
180 | 456 |
210 | 375 |
250 | 288 |
300 | 208 |
片対数グラフを作成し、プロット直線部分より傾きを調べ、T2値を計算する
求めた測定値からグラフを作成します。
横軸はTE(ms)、縦軸は信号強度にします。
今回は説明用でエクセルで作成していますが、申請する時には片対数グラフに手書きで作成してください。
作成した片対数グラフの直線部から傾きを調べます。
今回はTE:90msとTE:250msで行います。
A点:TE1(90ms)、SI1(829)
B点:TI2(250ms)、SI2(288)
InM1-InM2(T)=(logM1-logM2(τ))/logeより、
傾き=(logM1-logM2)/(TE1-TE2)=-loge(1/T2)=-(1/2.303)×(1/T2)、グラフより
傾き=(logM1-logM2)/(TE1-TE2)=(log829-log288)/(90-250)=-0.0028697=-(1/2.303)×(1/T2)
T2=1/(0.0028697×2.303) ≒151(ms)となります。
レポートの書き方
レポートの書き方を説明します。
1)題名
T1値、T2値測定試験
2)使用したファントム
精製水 500mLにガドリニウム造影剤を混ぜて0.5mmol/lのガドリニウム希釈溶液ファントムを作成した。
3)コイル
使用したコイルを書きます
4)撮像条件
T1値測定:室温・シーケンス名・TR・TE・TI(変動)・Matrix・NEX・スライス厚・バンド幅・FOVを記入します。
T2値測定:室温・シーケンス名・TR・TE(変動)・Matrix・NEX・スライス厚・バンド幅・FOVを記入します。
5)測定方法
例)
・ファントム安定化のため、測定前日からMRI室で保管した。
・ファントムをガントリ中心に設置後30分以上時間を空けた。
・T1値測定の際のIR法では信号は絶対値表示になるため、null pointより短い値の信号強度はマイナスとした。T2値は測定値を用いて、結果を片対数グラフにプロットし、直線部分の傾きよりT1値,T2値を算出した。
6)結果
測定した値と計算方法を正確に記入しましょう。
片対数グラフを一緒に添付してください。
7)考察
この実験から考えられることを数行で簡潔にまとめれば大丈夫です。
・申請受託の可否に関しては一切責任は持てませんのでご了承ください
参考書籍
性能評価を行う中で重宝した参考書籍をご紹介します
性能評価や試験対策として両方とも必須だと思います
以上参考になれば嬉しいです
それではまた!!
以下の記事も参考にしてください
・MRI認定技師(磁気共鳴専門技術者)に一年で合格する方法【オススメ参考書や勉強方法・資格申請手順まで公開】
・MRI過去問の解答と解説
・他のMR性能評価試験はこちら