【劇場版 名探偵コナン緋色の弾丸】MRIのクエンチとは?原因と対処法をわかりやすく解説!
こんにちは、放射線技師のラジブログです♪
劇場版『名探偵コナン 緋色の弾丸』では、MRIのクエンチという専門用語が登場しました
この言葉に馴染みがない方も多いと思いますが、放射線技師としては注目すべきポイントです
この記事では、以下の内容をわかりやすく解説します
- MRIのクエンチとは何か?
- クエンチが起きる原因
- クエンチが発生したときの影響
- クエンチが起きた場合の対処法
コナンファンや医療に興味のある方にとっても役立つ情報をお届けしますので、ぜひご一読ください
なるべく簡単な表現で説明しますね
コナンにも出てきた「クエンチ」とは何か?徹底解説
クエンチとは
クエンチは、MRI装置の超伝導状態から常伝導状態に急激に変わることです
これだけではわかりにくいので、まずはMRIの仕組みを簡単に説明します
MRIの仕組み
MRI装置は強い磁石を使って人体の画像を作ります
この磁石には、永久磁石、普通の磁石、超伝導磁石の3種類があります
それぞれの磁石が作る磁場の強さは以下の通りです
- 永久磁石: 〜0.3テスラ
- 普通の磁石: 〜0.2テスラ
- 超伝導磁石: 0.5〜7テスラ
超伝導磁石はとても強い磁場を作るため、現在多くの病院で使われています
超伝導状態では電気抵抗が0になり、一度流した電流がずっと流れ続けます
これを維持するために液体ヘリウムで冷やしていますが、何かの原因で超伝導状態を保てなくなると、常伝導状態に移行してしまいます
これがMRIでのクエンチです
クエンチの原因とは何か?
超伝導状態から常伝導状態になることをクエンチと呼んでいますが、この超伝導状態を保つには3つの条件があります
- 臨界温度
- 臨界電流
- 臨界磁場
この3つの条件を全て満たさないとなりません
1つでも欠けると、常伝導への急激な移行、すなわちクエンチになります
クエンチが起きると超伝導状態ではなくなります
超伝導状態で無くなると、電気抵抗0という特徴もなくなります
つまり、今まで電気抵抗を受けずに流れていた大量の電流は、急激に電気抵抗を受け発熱します
この熱はMRI装置の中にある液体ヘリウムに伝わり、液体ヘリウムの温度が沸点を越えると沸騰気化して大量のヘリウムガスになります
クエンチが起きるとどのような影響がある?
MRIでクエンチが起きた時に起こる可能性のある事故は以下の2つです。
酸素欠乏の可能性
超伝導MRI装置には500〜800リットルの液体ヘリウムが入っており、これが気体になると非常に大量のヘリウムガスが発生します
MRI撮影室にヘリウムガスが充満すると酸素が減ってしまい、酸欠になる恐れがあります
通常は排気装置が設置されていますが、速やかに避難が必要です
大気中の酸素濃度と体に現れる症状は以下の通りです
21% 通常の空気の状態
18% 安全だが連続換気が必要
16% 頭痛、吐き気
12% 目眩、筋力低下
8% 失神昏倒、7〜8分以内に死亡
6% 瞬時に昏倒、呼吸停止、死亡
ヘリウムガスが充満すると危険だとわかりますね
通常は屋外にヘリウムガスを排出するための排気装置が設備されていますので、撮影室に充満する可能性は低いです
ただ、万が一の可能性もあるので速やかに避難するようにします
凍傷の可能性
気化したヘリウムガスはとても冷たく、触れると凍傷を引き起こす可能性があります
また、低体温症のリスクもあります
液体ヘリウムから急激に気化することでヘリウムガスは-200℃となり、MRI装置から押し出されるように大量に外部に放出されることで、大気中で白い濃霧を引き起こします
この白い煙は一見すると火事と間違われることがあります
クエンチが起きたらどうすればいいの?
クエンチが発生したら、速やかに室外に避難しましょう
ヘリウムガスは軽いため、天井側に溜まります
低い姿勢で素早く退室することが重要です
まとめ
クエンチについて理解できましたでしょうか?少し難しい部分もありましたが、簡単にまとめます
- クエンチはMRI装置の超伝導状態が常伝導状態に移行する現象です
- クエンチが起きると液体ヘリウムが気化し、酸素欠乏や凍傷のリスクがあります
- クエンチが発生した場合は、姿勢を低くしながら迅速に退室することが大切です
これでクエンチについての知識が深まったと思います
今後も放射線技師としての情報をお届けしていきますので、よろしくお願いします♪
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