MRI原理教室

MRI原理教室⑦:k-spaceの理解とTSE法の詳細

radio-neko

こんにちは、放射線技師のラジブログです

今回はMRI原理教室の第7回として、k-spaceとTSE法の追加情報について解説します

k-spaceは難しいと感じる方も多いですが、簡潔にわかりやすく説明していきますので、リラックスしながらご覧ください

それでは始めましょう!

k空間(k-space)

k空間(k-space)はMR信号を保管する場所です

静磁場の中にある被写体にRFパルスや傾斜磁場を用いて収集した信号を保管します

そしてフーリエ変化をすることで画像にしています

つまり被写体→k空間→MR画像となります

k空間の中心部分(低周波成分)はコントラストに関わっていて、画像の白黒の色味を左右します

k空間の周辺部(高周波成分)は空間分解能に関わっていて、画像のシャープさが左右されます

k-space order

k-space orderとはk空間を埋める順番のことです

k空間の埋め方により、動きに強い画像などを作成することが可能です

代表的な以下の4種類を紹介します

  • Cartesian order
  • Radial order
  • Propeller
  • Spiral order

Cartesian order

Cartesian orderは最も一般的なk空間の埋め方で、1行ごと順番に埋めていきます

Cartesianは大きく2つに分けることができます

  • Sequential order:下からもしくは上から順番に埋めていく方法
  • Centric order:k空間の真ん中を最初に埋め、その後に1つ下もしくは上を埋めて徐々に外側を埋めていく方法

Radial order

Radial orderはk空間を放射状に埋めていく方法です

この方法では被写体が少々動いても良好な画像を取得することができます

動きに強い理由
  1. 1回の読み取りが短時間で独立している
  2. 全てのスキャンがk空間の真ん中をスキャンしている
  3. 最も画像への影響が強いk空間の中心を高密度に得ることにより、各信号の補正が正確にできるのと、補正困難なデータを捨てることができるため

Propeller

PropellerはRadial orderを改良したもので、BLADEとも呼ばれます

Radial orderでは角度を変えながら1行づつスキャンを行なっていましたが、時間短縮目的で複数行をスキャンします

Radial orderと同じで動きに強いスキャン方法となります

k空間の中心部にのみならず、周辺部の信号も同時に得るのでより正確に補正が可能となります

Spiral order

Spiral orderは螺旋状に信号を収集する方法です

短時間で高分解能な画像が得られるだけでなく、k空間の中心部よりデータ収集することにより、最初の大きな信号を低周波成分に当てはめるので高いSNRとなります

エルミート対称

MRI完全解説より引用

k空間はエルミート対称を持っています

エルミート対称とは、行と列を入れ替え、各素数の虚部の符号を入れ替えると元に戻る関係のことです

例えば、a + ibという式があると、虚部は+ibの部分です

MRI完全解説より引用すると、この座標の第1象限のデータさえ取れれば、虚部の符号を入れ替えることで第2象限〜第4象限を全て埋めることが可能です

理論上はk空間の中心部を含めた1/4の信号があれば画像を作成できますが、実際には不均一性やアーチファクトにより正確なエルミート対称ではありません

そのため、k空間の半分以上のデータを収集して補正を行います

ハーフフーリエ・部分フーリエ

k空間の半分+数行を収集し、残りは補正を入れ算出したデータでMR画像を作る方法です

信号取得回数が半分強で済むので、撮像時間が約半分になります

しかし、実測データも半分程度なので、S/Nは約1/√2=70%となります

以上を踏まえた上でTSE法の追加情報に移りたいと思います

TSE法〜追加情報〜

それでは、前回説明できなかったTSE法の補足をします

ブラーリング

TSE法は励起パルスの後に複数回の再収束パルスを照射することでデータを収集しますが、信号は時間と共にT2減衰していきます

最初の再収束パルスで得た信号と最後の再収束パルスで得た信号には差が出てしまいます

この差が大きくなると、ブラーリング(ボケ)が生じます

実効TE

SE法では毎回同じTEで信号を取得しているので、k空間内で信号の違いはありません

しかし、TSE法では複数のTEの信号を取得するので、k空間内に複数のTEを持つ信号が混在します

そこで最もコントラストに反映するエコーのTEを実効TEと呼びます

TSE法のSE法との違う部分

ブラーリング

各ショットの最後の方の信号はk空間の端に充填されます

k空間の端は高周波成分つまり、空間分解能に関わる部分でした

この部分に低い信号が入るので、ボケた画像になってしまいます

TEの平均化

k空間の各行の信号は様々なTEで取得されます

実効TEがコントラストに強く影響していますが、TEは平均化され、T2コントラストが少し低下した画像になります

T2フィルタリング

再収束パルスの数をETL(echo train length)もしくはTF(turbo factor)と呼びます

ETLが大きいと、信号収集中にT2減衰していきます

最後の方に得られる信号はT2の長い組織だけになってしまいます

つまり、T2の長い組織の信号が強調されることになります

まとめ

  • k空間はMR信号を保管する場所であり、中心部はコントラストに、周辺部は空間分解能に関わります
  • k空間の埋め方は、Cartesian、Radial、Propeller、Spiralの4種類があります
  • 理論上はk空間の中心部を含めた1/4の信号で画像を作成できますが、補正のために半分以上のデータが必要です
  • TSE法では複数のTEの信号を取得するため、実効TEがコントラストに反映します
  • ETLが大きいとブラーリングやTEの平均化が生じます

以上がk-spaceとTSE法の追加情報でした

参考になれば幸いです

それではまた!!

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