MRI認定 性能評価

【MR専門技術者 性能評価】スライス厚測定試験とレポートの書き方を解説

radio-neko

MR専門技術者を目指す中で、一番苦労するのが性能評価です。

性能評価は4つ行わなければなりません。

性能評価試験項目

1.均一ファントムによるSNR測定試験

2.均一性試験

3.スライス厚測定試験

4.T1値,T2値測定試験

この記事では、
3.スライス厚測定試験の解説とレポートの書き方を解説します。

この記事でわかること
  • スライス厚測定方法
  • レポートの書き方

・申請受託の可否に関しては一切責任は持てませんのでご了承ください。
・この記事ではNEMA法に基づいて解説を行います。

以下の記事も参考にしてください。
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MR専門技術者認定機構が求める条件

まずは認定機構がホームページに出している条件を確認しましょう。

3.スライス厚測定試験

1)標準的なNEMA法に準じて、ウェッジ法を用いて測定を行う。

2)2枚の楔型三角錐が交叉したスライス厚測定用ファントムの使用が望ましい。

3)撮像条件
・SE法を用い、マルチスライスで撮像を行う。
・マルチスライスで少なくとも3スライスは撮像を行い、スライス間距離が予想される半値幅の2倍以上であること。
・TR≧3×T1、スライス厚とTEは一般的に臨床に使用される範囲。
・十分なSNRを担保すること。

4)測定に際しコンピュータソフトを使用してもいいが、結果は正方眼紙1枚に測定方法とともに、得た数値の根拠となる計算式を表示する。

5)楔形三角錐がひとつしかない場合や、当該ファントムを持ち合わせていない場合は、ファントムを作成もしくは独自な方法で求めてもよい。独自な方法を用いる場合は、信頼度を記す。

基礎知識の確認

スライス厚について

MRIのスライス厚は、RFパルスとスライス選択傾斜磁場の傾きの強弱で規定されます。
理想的なスライスプロファイルは矩形であるが、そのような励起を行うには無限時間のRFパルスを印加する必要があります。実際にはある程度の時間でRFパルスを印加するために台形に近いスライスプロファイルになります。

定義としては、

NEMA:スライス厚はスライスプロファイルの半値幅(FWHM)
AAPM:スライス厚はスライスプロファイルの半値幅(FWHM)
    他のスライスプロファイルの表現法として1/10値幅(FWTM)

となっている。

つまり半値幅と1/10値幅の2つの定義が存在するが、半値幅を使用するのが一般的になっています。

スライス厚測定方法の種類

スライス厚を測定する方法としては、スラブ法とウェッジ法の2種類が一般的であるが、ウェッジ法が測定精度が高いため使用されることが多いです。

スラブ法

薄い低信号物質の傾斜スラブファントムを使用する方法
利点:測定が簡単
問題点:スラブファントムの厚さが誤差要因となる。(薄いスライス厚測定には不向き)

ウェッジ法

低信号物質の楔板(ウェッジ)ファントムを使用する方法
利点:測定精度が高い
問題点:微分する必要があり測定が煩雑

MR専門技術者認定試験の申請ではNEMA法に準じて、ウェッジ法を用いて測定を行います。
次でウェッジ法をもう少しだけ詳しく解説します。

ウェッジ法

ウェッジファントムは容器の中に傾斜角αのウェッジが2つあり、互いに反対向きとなるように一対並べて設置されています。
傾斜角を反対にしたウェッジが対をなすように配置されているのは、ファントム配置の回転を補正するためです。

ファントムと撮像条件

ファントムの選定

測定するファントムは

・2枚の楔型三角錐が交叉したスライス厚測定用ファントムの使用が望ましい。
・楔形三角錐がひとつしかない場合や、当該ファントムを持ち合わせていない場合は、ファントムを作成もしくは独自な方法で求めてもよい。独自な方法を用いる場合は、信頼度を記す。

と記載されていますので、その条件を満たすようにしてください。

私は施設に日興ファインズ社製「PVAゲル封入MRIファントム 90-401型」がありましたのでそちらを使用しました。

・T1値、T2値は温度で変化をするので、測定前日からMRI室で保管するようにしてください。
・ファントムの楔の角度θも調べてください。

撮像条件の設定

次に撮像条件です。

  • SE法を用い、マルチスライスで撮像を行う。
  • ・マルチスライスで少なくとも3スライスは撮像を行い、スライス間距離が予想される半値幅の2倍以上であること。
  • ・TR≧3×T1、スライス厚とTEは一般的に臨床に使用される範囲。
  • ・十分なSNRを担保すること。

上記の条件を必ず満たしながら撮像条件を設定してください。

以下に私がスライス厚測定試験を行った時の撮像条件を記しますので参考にしてください。

撮像条件

コイル:装置内蔵Body Coil
シーケンス名:SE法
TR:3500ms
TE:15ms
スライス厚:5mm
スライス間隔:5mm
スライス枚数:3枚
Matrix:256×256
NEX:14
バンド幅:150Hz/pixel(メーカーによりバンド幅の定義は異なります。)
FOV:256×256mm

・ファントムを安定させるため、ガントリーにファントムを設置後10分以上時間を開けて撮像すること
・十分なSNRが担保できるように条件を設定してください。
・ピクセルサイズが1×1mmになるように設定すると計算をするときに楽になります。

スライス厚の測定

撮像したMR画像を処理してスライス厚を測定します。

スライス厚の測定手順は大きく分けて3つの行程があります。

  1. Image Jでの処理
  2. スライスプロファイルの作成(Excelを使用)
  3. スライスプロファイルからスライス厚を求める

①Image Jでの処理

私は測定をするためにImage Jを使用しました。
Image JはJavaで書かれたフリーソフトの画像処理プログラムです。
Image JはWebからダウンロードできるので試してみてください。

この処理をすることで、1pixelずつが数値に変換されます。

・上の図は説明用に撮影したものなので、切り取る場所が正しくはありませんので注意してください。
・実際には、各楔の中心から短軸は10pixel以上、長軸は信号変化が十分入るようにする。
・Image Jのバージョンにより多少異なる場合がありますので、詳しくはWebなどを参考にしてください。

②スライスプロファイルの作成

次にExelを使用します。

楔が2つあるのでこの作業を2回行ってください。方眼紙に手書きでスライスプロファイルを作成します。

スライスプロファイルからスライス厚を求める。

①スライスプロファイルから平均最大値(Dmax)、平均最小値(Dmin)、D1/2=(Dmax-Dmin)/2を求める

これはスライスプロファイルを読み取るだけです。
先ほど書いたスライスプロファイルからDmax=185、Dmin=0、D1/2=92.5と求められます。

D1/2とスライスプロファイルの交点から半値幅のピクセル数を読み取りスライス厚を求める

これもスライスプロファイルを読み取るだけです。
上の図では17.0pixelと読み取れます。

次に、pixelからmmに単位を変換します。
撮像条件で設定したFOV256×256とマトリクス数256×256から1pixel=1mmにしたので、半値幅が17.0mmと変換できます。

スライス厚の求め方

スライス厚は以下の式で求めることができる。

スライス厚T=tanθ×半値幅(L)

使用したファントムの楔の角度θは15°だったので式に代入して求めると、
スライス厚T1は4.6mmとなる。

この作業をもう一方の楔でも行います。
ちなみにもう片方のスライス厚T2は4.8mmとなりました。

回転補正をして正確なスライス厚を求める

求めたスライス厚に回転補正をすることで正確なスライス厚になります。

回転誤差を補正する式

(L1-L2)/(L1+L2)=sin2α/sin2θ・・・(L1>L2)

L1:厚いスライス厚の半値幅
L2:薄いスライス厚の半値幅
θ:使用したファントムの楔の角度

T1、T2の結果から厚いスライス厚の半値幅をL1、薄いスライス厚の半値幅をL2として誤差角αを求めます。

計算した結果、誤差角αが0.4093°となりました。
そうしたら正確なスライス厚を計算しましょう。

回転補正したスライス厚の求め方

回転補正したスライス厚は以下の式で求めることができる。

スライス厚T=半値幅(L)×tan(θーα)

θ:使用したファントムの楔の角度
α:計算した誤差角

計算をすると2つのスライス厚が同じになるはずです。
これで正確なスライス厚を求めることができます。

レポートの書き方

レポートの書き方を説明します。

1)題名
スライス厚測定試験

2)使用したファントム
ファントムの内容物・T1値・T2値・使用する楔の角度を記載してください。

3)コイル
使用したコイルを書きます

4)撮像条件
室温・シーケンス名・TR・TE・Matrix・NEX・スライス厚・スライス間隔・バンド幅・FOV・スライス枚数は最低限書いときましょう。

5)測定方法
例)
・ファントムをガントリ中心に設置後10分以上時間を空けた。
・撮像した中心の画像を画像解析ソフトImage Jにて処理をした。
・処理したデータよりスライスプロファイルを作成した。
・スライスプロファイルから平均最大値(Dmax)、平均最小値(Dmin)、D1/2=(Dmax-Dmin)/2を求めた。

6)結果
測定した値と計算方法を正確に記入しましょう。

7)考察
この実験から考えられることを数行で簡潔にまとめれば大丈夫です。

・申請受託の可否に関しては一切責任は持てませんのでご了承ください。

参考書籍

性能評価を行う中で重宝した参考書籍をご紹介します。
性能評価や試験対策として両方とも必須だと思います。

以上参考になれば嬉しいです。

それではまた!!

以下の記事も参考にしてください。
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