【MR専門技術者 性能評価】SNR測定方法とレポートの書き方を解説
MR専門技術者を目指す中で、一番苦労するのが性能評価です。
性能評価は4つ行わなければなりません。
1.均一ファントムによるSNR測定試験
2.均一性試験
3.スライス厚測定試験
4.T1値,T2値測定試験
この記事では、
1.均一ファントムによるSNR測定試験の解説とレポートの書き方を解説します。
- SNR測定方法
- レポートの書き方
・申請受託の可否に関しては一切責任は持てませんのでご了承ください。
・この記事ではNEMA法に基づいて解説を行います。
以下の記事も参考にしてください。
・
・MRI過去問の解答と解説
・他のMR性能評価試験はこちら
MR専門技術者認定機構が求める条件
まずは認定機構がホームページに出している条件を確認しましょう。
1.均一ファントムによるSNR測定試験
1)標準的なNEMA法で測定する。2)ファントムについて
・頭部:最小寸法は撮像面内で直径10cmの円または保証範囲の85%のうち大きい方を満たすもの。
・体幹部:最小寸法は撮像面内で直径20cmの円または補償範囲の85%のうち大きい方を満たすもの。
・T1値<1200ms、T2値>50ms
・頭部と体幹部の2種類の大きさのファントムを使用すること。3)撮像条件
・ファントムの安定化を図る。
・ファントムはアイソセンターに置かれたRF受信コイルの中心に配置する。
・室温およびファントム温度は22±4℃。
・Spin echo(SE)法が望ましいが、必ずしもこの限りではない。
・TR≧3×T1、TEは一般的に臨床に使用される範囲。
・シングルスライスで、撮像面はAxial。
・FOVは面内においてRFコイルの最大径の110%を超えないこと。
・スライス厚≦10mm
・表面コイルは使用できない。
・Parallel imagingを使用してはいけない。
・ROIは画像断面の75%は少なくとも囲むこと。4)測定結果の基になった数値と計算式を記載する。また、その数値が何を表しているのかも示す。
5)差分(subtraction)ができない装置は簡易法を用いても構わない。
基礎知識の確認
SNRとは
まずはSNRについての理解を深めましょう。
SNRは画像の雑音特性を表す値。
信号と雑音の比。SNRは値が高い方が雑音の少ない画像と評価される。
SNR測定では、信号値は信号強度の平均値ですが、雑音値に関しては測定方法により定義が異なります。
SNR=信号値/雑音値
信号値:測定する領域の信号平均値(Save)
雑音値:測定方法により定義が異なる
次は、雑音値を求めましょう。
先ほども書いたのですが、雑音値は測定方法によりROIの置く位置や計算方法が異なります。
今回はMR専門技術者を受験するための差分法(NEMA法)を紹介します。
差分法とは
差分法:ファントムを同一条件で2回連続で撮像し、得られた2枚の画像から差分画像を作成すること。
差分法での雑音値の求め方
得られた2枚の画像から差分画像を作成し、ファントム領域内に設定したROIから雑音(Noise)を次式から求める。
Noise=SDsub/√2
Noise:雑音値
SDsub:差分画像の標準偏差
√2:差分処理による雑音の過大評価の補正
ここまでが基本知識となります。
実際の測定手順と撮像方法
ファントムの選定
測定するファントムは、
- 頭部:最小寸法は撮像面内で直径10cmの円または保証範囲の85%のうち大きい方を満たすもの。
- 体幹部:最小寸法は撮像面内で直径20cmの円または補償範囲の85%のうち大きい方を満たすもの。
- T1値<1200ms、T2値>50ms
- 頭部と体幹部の2種類の大きさのファントムを使用すること。
この条件を満たしていることを必ず確認してください。
ファントムは専用の性能評価用のものか装置付属のものを利用すると楽です。
※私は装置付属のファントムを使用しました。
・T1値、T2値は温度で変化をするので、測定前日からMRI室で保管するようにしてください。
・レポートにファントムのT1値、T2値は記載しないといけないので、必ず測定をしてください。
※均一性試験とSNR測定試験では同じファントムを使用できますので、同時に測定を行うと非常に楽です。
均一性試験の方法は”【MR専門技術者 性能評価】均一性試験とレポートの書き方を解説”をご覧ください。
撮像条件の設定
次に撮像条件です。
- ファントムの安定化を図る。
- ファントムはアイソセンターに置かれたRF受信コイルの中心に配置する。
- 室温およびファントム温度は22±4℃。
- Spin echo(SE)法が望ましいが、必ずしもこの限りではない。
- TR≧3×T1、TEは一般的に臨床に使用される範囲。
- シングルスライスで、撮像面はAxial。
- FOVは面内においてRFコイルの最大径の110%を超えないこと。
- スライス厚≦10mm
- 表面コイルは使用できない。
- Parallel imagingを使用してはいけない。
- ROIは画像断面の75%は少なくとも囲むこと。
上記の条件を必ず満たしながら撮像条件を設定してください。
以下に私がSNR評価を行った時の撮像条件を記しますので参考にしてください。
コイル:装置内蔵Body Coil
シーケンス名:SE法
TR:1000ms
TE:15ms
スライス厚:8mm
Matrix:256×256
NEX:2
バンド幅:130Hz/pixel(メーカーによりバンド幅の定義は異なります。)
FOV:185×185mm(頭部想定ファントム時)
FOV:330×330mm(腹部想定ファントム時)
・ファントムを安定させるため、ガントリーにファントムを設置後10分以上時間を開けて撮像すること。
・2回目の撮像を5分以内に行うこと。
・中心周波数・ゲインは同一条件にすること。
SNR測定方法
差分処理
- 連続撮像して得られた2つの画像から差分画像を作成する。
装置内蔵の差分処理で大丈夫です。この時に装置によっては差分結果がマイナスになった場合に「0」とするかマイナスの値を保持するか選択できる装置もあります。必ずマイナスの値を保持するようにしてください。
装置での差分の方法が分からなければ、こちら⇩の書籍のP.44以降に各メーカーごとの差分処理の方法が記載されていますので参考にしてください。
信号値と雑音値の測定とSNRの算出
- 連続して撮像して得られた2つの画像のどちらか1つ(信号値)と、差分処理して得られた差分画像(雑音値)の同じ位置にROIを設定する。
- ROIの大きさはファントム像の中心から75%以上の面積を測定できるように設定する。
- 信号値は測定した値を使用する。
- 雑音値は『差分法での雑音値の求め方』で説明した計算方法で算出する。
- 得られた信号値と雑音値を用いて『SNRの式』を使いSNRを求める。
レポートの書き方
レポートの書き方を説明します。
1)施設名・氏名・装置名を書きます。(レポート最上部に書きましょう)
2)題名
均一ファントムによるSNR測定試験
標準的なNEMA法に基づきSNR測定を行った。
と書きましょう。何をどの方法で行ったかを明確にします。
3)使用したファントム
ファントムの直径や内容物・T1値・T2値を必ず記載してください。
4)コイル
使用したコイルを書きます
5)撮像条件
室温・シーケンス名・TR・TE・Matrix・NEX・スライス厚・バンド幅・FOVは最低限書いときましょう。
6)測定方法
例)
・ファントム温度を安定させるため1日以上MRI室内で保管した。
・ファントムをガントリ中心に設置後10分以上時間を空けた。
・設定した条件でファントムを5分以内に2回連続で撮像した。
・中心周波数・ゲインは同一条件にした。
・得られた2枚の画像を差分処理して差分画像を作成した。
・ファントム面積の約75%含むようにROIを設定して信号値を測定した。
・差分画像も同じ大きさ設定したROIを用い標準偏差SDsubを測定し、SDsub/√2より雑音値を算出した。
・SNRを信号値/雑音値から算出した。
7)結果
測定結果を記せばOKです。
8)考察
この実験から考えられることを数行で簡潔にまとめれば大丈夫です。
・申請受託の可否に関しては一切責任は持てませんのでご了承ください。
参考書籍
性能評価を行う中で重宝した参考書籍をご紹介します
性能評価や試験対策として両方とも必須だと思います
以上参考になれば嬉しいです
それではまた!!
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